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経営管理

企業は経営理念やビジョンを掲げるだけでは成果を出せません。理念を実現するために、日々の業務を計画し、実行し、結果を振り返り、改善していく一連の活動が必要です。この活動全体を経営管理と呼びます。

経営管理の対象は多岐にわたります。お金の流れを管理する財務管理、土地・建物・設備などを管理する資産管理、従業員の採用・育成・評価を行う人事管理、そして業務に必要なデータや知識を管理する情報管理などがあります。これらを適切にコントロールし、組織全体で経営目標(売上目標や利益目標など、企業が達成を目指す具体的な数値・状態)の達成を目指すのが経営管理の役割です。

経営管理の基本的な考え方として、最も広く知られているのがPDCAサイクルです。PDCAは次の4つのステップを繰り返すことで、業務を継続的に改善していくフレームワークです。

ステップ英語内容
P(計画)Plan目標を設定し、達成のための計画を立てる
D(実行)Do計画に基づいて実際に業務を行う
C(評価)Check実行した結果を目標と比較し、評価する
A(改善)Act評価をもとに問題点を改善し、次の計画に反映する

PDCAの特徴は、一度回して終わりではなく、何度もサイクルを回すことで段階的に業務の質を高めていく点にあります。たとえば、営業部門が「月間売上1,000万円」を目標に計画を立て(P)、営業活動を実行し(D)、月末に結果を集計して目標との差を分析し(C)、翌月の営業手法を見直す(A)──このサイクルを毎月繰り返すことで、着実に成果を改善できます。

PDCAが「計画を立ててから行動する」のに対し、変化の激しい状況ではもっと素早い意思決定が求められることがあります。そこで注目されているのがOODAループ(ウーダループ)です。

ステップ英語内容
O(観察)Observe周囲の状況をありのままに観察する
O(状況判断)Orient観察した情報をもとに状況を判断する
D(意思決定)Decide判断に基づいて行動方針を決定する
A(行動)Act決定した方針に従って即座に行動する

OODAループは、もともと軍事戦略から生まれた考え方で、刻々と変わる戦場の状況に素早く対応するために開発されました。ビジネスでは、市場環境が急速に変化する場面や、競合の動きにすぐ対応しなければならない場面で有効です。

試験で出るポイント

PDCAとOODAの違いを問う問題が出ます。PDCA=「計画重視・継続的改善」、OODA=「観察重視・素早い意思決定」と整理しておきましょう。PDCAは品質管理など安定した業務に、OODAは変化の激しい環境での対応に向いています。

BCP と BCM ── 事業を止めないための備え

Section titled “BCP と BCM ── 事業を止めないための備え”

地震や台風などの自然災害、感染症の流行、大規模なシステム障害──企業はいつ予期しない緊急事態に見舞われるかわかりません。こうした事態が発生しても、企業の重要な業務をなるべく中断させず、また中断しても早期に復旧するためにあらかじめ策定しておく計画がBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)です。

BCPでは、次のようなことを事前に定めておきます。

  • 優先的に復旧すべき重要業務の特定
  • 代替手段の確保(本社が使えなくなった場合の代替拠点など)
  • 必要な人員・設備・情報のバックアップ方法
  • 復旧までの目標時間

BCPの策定だけでなく、それを組織全体で維持・改善し続ける活動をBCM(Business Continuity Management:事業継続管理)と呼びます。BCPは「作って終わり」ではなく、定期的な訓練や見直しを通じて実効性を高めていくことが重要です。

BCPやBCMを策定する際に、どのようなリスクがあるかを特定し、その大きさや影響度を評価するプロセスをリスクアセスメントといいます。

試験で出るポイント

BCPは「防災対策」や「保険」とは異なります。BCPの本質は「事業の継続・早期復旧」にあります。「被災時に重要業務を継続するための計画」という定義を正確に覚えましょう(2020年 問26で出題)。

ヒューマンリソースマネジメント ── 人材の育成

Section titled “ヒューマンリソースマネジメント ── 人材の育成”

経営資源のうち「ヒト」は、他の資源と異なり、育成によって能力を高めることができます。従業員の能力を引き出し、組織全体の成果につなげる人的資源管理のことをHRM(Human Resource Management)と呼びます。ここでは、代表的な人材育成の手法を見ていきましょう。

手法正式名称内容特徴
OJTOn the Job Training実際の業務を通じて、上司や先輩が指導する実践的なスキルが身につく
Off-JTOff the Job Training業務を離れて行う研修やセミナー体系的な知識を学べる

OJTは「仕事をしながら学ぶ」方法で、たとえば新入社員が先輩社員と一緒に営業先を回りながら商談の進め方を学ぶといった形です。一方、Off-JTは「仕事を離れて学ぶ」方法で、外部の研修機関で行う集合研修や、社内の勉強会などがこれにあたります。効果的な人材育成には、OJTとOff-JTを組み合わせることが大切です。

e-ラーニングは、インターネットやコンピュータを利用した学習方法です。場所や時間を選ばず学習できるため、遠隔地の従業員でも同じ教育を受けられるメリットがあります。

さらに進んだ仕組みとしてアダプティブラーニングがあります。これは、AIなどのITを活用して学習者一人ひとりの理解度や進捗に応じて最適な学習コンテンツを自動的に提供する仕組みです。得意な分野はスキップし、苦手な分野は重点的に学ぶといった、個人に最適化された学びが実現できます。

従来の知識やスキルに加え、新しい分野のスキルを身につけ直すことをリスキリングといいます。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、デジタル技術を活用できる人材への転換が求められる中、リスキリングの重要性が高まっています。

試験で出るポイント

アダプティブラーニングは「学習者個人の理解度に応じて最適なコンテンツを提供する仕組み」です。タレントマネジメントやナレッジマネジメントと混同しないようにしましょう(2022年 問4で出題)。

部下や後輩の成長を支援する手法として、コーチングメンタリングがあります。

コーチングは、相手に答えを教えるのではなく、質問や対話を通じて相手自身が答えを見つけ出すよう導く手法です。「この問題をどう解決すれば良いと思う?」と問いかけ、本人の主体的な気づきを促します。

メンタリングは、経験豊富な先輩(メンター)が、後輩(メンティー)に対してキャリアや仕事全般について助言・支援を行う仕組みです。直属の上司ではなく、他部門の先輩がメンターになることが多く、業務上の悩みだけでなくキャリア形成の相談もできる点が特徴です。

CDP(Career Development Program)は、従業員のキャリア目標と企業の人材ニーズをすり合わせ、計画的に能力開発を進める仕組みです。「3年後にプロジェクトリーダーになる」という目標に対して、必要な研修や異動の計画を立てるといった形で運用されます。

MBO(Management by Objectives and self-control:目標による管理)は、上司と部下が話し合って目標を設定し、その達成度で業績を評価する管理手法です。「目標管理制度」とも呼ばれます。

MBOのポイントは、上司が一方的に目標を押しつけるのではなく、部下自身が目標設定に参加する点です。自分で決めた目標だからこそ主体的に取り組むことができ、モチベーション(仕事に対する意欲・動機づけ)の向上につながります。

タレントマネジメントとリテンション
Section titled “タレントマネジメントとリテンション”

タレントマネジメントは、従業員一人ひとりの能力・スキル・経験などを一元的に把握し、適切な人材配置や育成に活かす戦略的な人材管理の手法です。「誰がどんなスキルを持っているか」を見える化し、組織全体で最適な人材活用を図ります。

優秀な人材が離職しないよう、組織に引き留める施策をリテンションといいます。給与や待遇の改善だけでなく、やりがいのある仕事の提供やキャリア支援など、さまざまな施策が含まれます。

HRテック(HRTech)は、HR(Human Resources:人的資源)とTechnology(技術)を組み合わせた言葉で、AIやIoTなどのITを活用して人事関連業務を効率化・高度化する手法の総称です。たとえば、AIを使った採用候補者のスクリーニングや、従業員のエンゲージメント(仕事への愛着度)をデータで分析する仕組みなどがあります。

試験で出るポイント

HRTechは「人事×IT」です。FinTech(金融×IT)やEdTech(教育×IT)など「○○Tech」の形で出題されることがあるので、それぞれ何の分野とITの組み合わせかを整理しておきましょう(2021年 問26で出題)。

メンタルヘルスとは、従業員の心の健康のことです。過度なストレスや長時間労働は、うつ病などの精神的な不調を引き起こすことがあります。企業には、ストレスチェックの実施や相談窓口の設置など、従業員のメンタルヘルスを守る取り組みが求められています。

組織の目標を達成するために、メンバーを導き、影響を与える力をリーダーシップといいます。リーダーシップの発揮の仕方にはさまざまな考え方があります。

従来は「リーダーシップはリーダー個人の資質である」と考えられていましたが、現在では、状況に応じて最適なリーダーシップのスタイルは変わるという考え方が主流です。これをコンティンジェンシー理論(状況適合理論)といいます。

また、リーダー1人がすべてを指揮するのではなく、チームのメンバーがそれぞれの強みを活かしてリーダーシップを分担するシェアードリーダーシップや、リーダーが「奉仕者」としてメンバーを支援するサーバントリーダーシップといった考え方も注目されています。

ワークエンゲージメントと働き方の多様化

Section titled “ワークエンゲージメントと働き方の多様化”

ワークエンゲージメントとは、仕事に対して「活力」「熱意」「没頭」の3つが揃った前向きな心理状態のことです。ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事に対するやりがいを感じ、生産性も高い傾向にあります。企業にとって、従業員のワークエンゲージメントを高めることは重要な経営課題です。

ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和のことです。長時間労働を是正し、育児や介護と仕事を両立できる環境を整えることで、従業員が充実した生活を送りながら仕事でも成果を発揮できるようにする考え方です。

DE&I(Diversity, Equity & Inclusion:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは、多様性(Diversity)を認め、公正な機会(Equity)を提供し、すべての人が組織に受け入れられ活躍できる状態(Inclusion)を目指す考え方です。性別・年齢・国籍・障がいの有無などに関わらず、多様な人材が力を発揮できる組織づくりが求められています。

IT を活用して、オフィス以外の場所で働く形態をテレワークといいます。テレワークにはいくつかの類型があります。

類型内容
在宅勤務自宅で業務を行う
モバイルワーク移動中やカフェなどで業務を行う
サテライトオフィス勤務本社以外の小規模なオフィスで業務を行う
ワーケーション観光地やリゾート地で休暇を楽しみながら業務を行う

テレワークは通勤時間の削減や柔軟な働き方を可能にする一方、労務管理の難しさ(勤務時間の把握など)やコミュニケーション不足といった課題もあります。

試験で出るポイント

この分野では用語の定義を正確に問う問題が多く出されます。とくにPDCA・OODA・BCP・OJT/Off-JT・アダプティブラーニング・HRTech・MBO・DE&Iは頻出です。似た用語を混同しないよう、それぞれの特徴を整理して覚えましょう。

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