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ITの有効活用

ITは「導入して終わり」ではない

Section titled “ITは「導入して終わり」ではない”

企業がITを活用する目的は、業務の効率化やコミュニケーションの円滑化など多岐にわたります。しかし、高価なシステムを導入しても、現場で使いこなせなければ意味がありません。このページでは、ITを有効に活用するための具体的な手段を、「業務効率化」と「コミュニケーション」の2つの観点から整理します。

企業がITを取り入れて業務を効率化する方法には、大きく分けて次の4つのアプローチがあります。

アプローチ内容具体例
ソフトウェアパッケージの導入既製品のソフトウェアを購入して業務に適用する会計ソフト、販売管理ソフト
グループウェアの導入チームの情報共有・共同作業を支援するソフトウェアを利用するスケジュール共有、ファイル共有、電子会議室
オフィスツールの導入文書作成・表計算・プレゼンなどの汎用ツールを活用するワープロソフト、表計算ソフト、プレゼンソフト
個別の情報システム開発・導入自社の業務に合わせたシステムをゼロから開発する受注管理システム、在庫管理システム

ソフトウェアパッケージは短期間・低コストで導入できる反面、自社の業務に完全には合わない場合があります。一方、個別開発は自社にぴったりのシステムが作れますが、開発期間とコストがかかります。企業はこれらを比較検討して最適な手段を選びます。

また、社内だけでなく拠点間をつなぐネットワークの構築も、システム化による効率化の重要な要素です。離れた拠点同士をネットワークで結ぶことで、データのリアルタイム共有や遠隔地との迅速な連携が可能になります。

BYOD ── 個人の端末を業務に使う

Section titled “BYOD ── 個人の端末を業務に使う”

BYOD(Bring Your Own Device)とは、従業員が個人で所有するスマートフォンやノートPCなどの端末を、業務に利用することです。

BYODの最大のメリットは、企業が端末を購入する費用を削減できることと、従業員が使い慣れた端末で仕事ができることです。しかし、個人の端末に業務データが保存されるため、端末の紛失や盗難による情報漏えいのリスクが高まります。そのため、BYODを導入する企業では、端末管理ソフトの導入やセキュリティポリシーの策定が欠かせません。

試験で出るポイント

BYODは「個人所有の端末を業務に使うこと」という定義が頻出です。セキュリティリスクとの対比で出題されることが多いので、メリットとデメリットの両面を押さえておきましょう。

テレワーク ── 場所にとらわれない働き方

Section titled “テレワーク ── 場所にとらわれない働き方”

テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用して、オフィス以外の場所で働く勤務形態のことです。自宅で働く「在宅勤務」、移動中やカフェなどで働く「モバイルワーク」、サテライトオフィスで働く形態などがあります。

テレワークは、通勤時間の削減、ワークライフバランスの向上、災害時の事業継続など多くのメリットがあります。一方で、コミュニケーション不足やセキュリティ確保が課題となるため、後述するWeb会議やチャットツールとの組み合わせが重要です。

AI利活用 ── 業務を賢く自動化する

Section titled “AI利活用 ── 業務を賢く自動化する”

AI利活用とは、人工知能(AI)の技術を業務に取り入れて、効率化や高度化を図ることです。ITパスポート試験では、AIの具体的な活用場面として次のようなものが挙げられます。

  • 顧客行動分析: ECサイトの購買データをAIで分析し、おすすめ商品を自動提案する
  • ビジネスプロセス自動化: AIがメールの内容を判別して適切な部署に自動振り分けする

AIは万能ではなく、学習データの偏りによる判断の誤りや、AIの判断過程がブラックボックスになるといった課題もあります。AIを活用する際は、最終的な判断を人間が行う仕組みが大切です。

なお、定型的な事務作業をソフトウェアで自動化するRPA(Robotic Process Automation)も業務効率化の有力な手段です。RPAについては「業務プロセスの改善」の章で詳しく解説しています。

IoTとM2M ── モノがつながる世界

Section titled “IoTとM2M ── モノがつながる世界”

ITの有効活用を語るうえで欠かせないのが、IoTM2Mです。この2つは混同しやすいため、しっかり区別しましょう。

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とは、家電、自動車、センサーなど、あらゆる「モノ」がインターネットに接続され、データをやり取りする仕組みのことです。たとえば、スマートスピーカーで自宅の照明を操作したり、農場のセンサーが土壌の水分量をクラウドに送信して最適な水やりを自動で行ったりするのがIoTの例です。

M2M(Machine to Machine)とは、機械と機械が人間を介さずに直接通信し合う仕組みのことです。たとえば、自動販売機が在庫の減りを検知して管理センターに自動で補充依頼を送る仕組みがM2Mです。

比較項目IoTM2M
つなぐ対象モノとインターネット機械と機械
通信の特徴インターネット経由で広範囲に接続機器同士が直接または限定的に通信
人間の関与人間が情報を活用する場面もある人間を介さない自動通信が特徴
具体例スマート家電、ウェアラブル端末自動販売機の在庫通知、工場設備の監視

試験で出るポイント

M2Mは「機械同士が人間を介さずに通信する」点が最大のポイントです。IoTは「モノがインターネットにつながる」という広い概念で、M2Mを含む場合もあります。試験では両者の違いを問う問題が出ます。

コミュニケーションのためのシステム利用

Section titled “コミュニケーションのためのシステム利用”

ここからは、人と人とのコミュニケーションを支えるITの活用について見ていきます。業務の効率化だけでなく、社内外のやり取りを円滑にすることもITの大きな役割です。

Web会議・電子メール・チャット

Section titled “Web会議・電子メール・チャット”

ビジネスにおけるコミュニケーション手段は、ITの発展によって大きく広がりました。代表的なものを整理します。

ツール特徴活用場面
電子メールテキストやファイルを非同期でやり取り社外への連絡、正式な依頼や報告
Web会議映像と音声でリアルタイムに遠隔会議テレワーク中の打ち合わせ、拠点間会議
チャット短いメッセージをリアルタイムにやり取りチーム内の素早い情報共有、雑談
電子掲示板特定のテーマについて投稿・閲覧社内の情報共有、Q&Aコーナー
ブログ個人やチームが記事形式で情報を発信社内ナレッジ共有、社外への情報発信

これらのツールは、それぞれ「リアルタイム性」と「記録性」のバランスが異なります。チャットやWeb会議はリアルタイム性が高く即座にやり取りできますが、電子メールや電子掲示板は記録が残りやすく後から参照しやすいという特長があります。目的に応じて使い分けることが大切です。

SMS(Short Message Service)は、携帯電話の電話番号を宛先として短いテキストメッセージを送受信するサービスです。電話番号さえ分かれば送れるため、本人確認の認証コード送信などに広く使われています。

SNS(Social Networking Service)は、インターネット上で人と人とがつながり、情報を共有・発信するためのサービスです。個人間のコミュニケーションだけでなく、企業がマーケティングや顧客対応に活用するケースも増えています。

SMSとSNSは名前が似ていますが、SMSは「電話番号ベースのメッセージ送信」、SNSは「インターネット上のコミュニティサービス」と、まったく異なるものです。

試験で出るポイント

SMSとSNSの違いを問う問題が出ます。SMS=電話番号宛のメッセージ、SNS=ネット上の人のつながりサービスと区別しましょう。

シェアリングエコノミーとは、個人が所有するモノ・場所・スキルなどの遊休資産を、インターネットを介して他者と共有・貸し借りする経済の仕組みです。

たとえば、使っていない部屋を旅行者に貸し出す民泊サービスや、自家用車で人を運ぶライドシェアがシェアリングエコノミーの代表例です。所有するのではなく「必要なときに借りる」という発想で、資源の有効活用やコスト削減を実現します。

シェアリングエコノミーが広がった背景には、スマートフォンの普及とSNSなどによる信頼関係の構築があります。レビューや評価の仕組みにより、知らない人同士でも安心して取引ができるようになりました。

ライフログとは、人の日常の行動や体験をデジタルデータとして記録したものです。具体的には、スマートウォッチで計測した歩数や心拍数、Webサイトの閲覧履歴、購買履歴、位置情報の移動記録などが該当します。

ライフログは、健康管理やマーケティング分析に活用される一方で、個人のプライバシーに深く関わるデータでもあるため、適切な管理と利用者の同意が重要です。

情報銀行とPDS ── 個人データを自分で管理する

Section titled “情報銀行とPDS ── 個人データを自分で管理する”

ライフログのような個人データの活用が進む中で、「自分のデータは自分でコントロールしたい」というニーズが高まっています。これに応える仕組みが情報銀行PDSです。

PDS(Personal Data Store)とは、個人が自分自身のデータを一元的に蓄積・管理し、必要に応じて第三者に提供できる仕組みのことです。銀行に預金を預けるように、自分のデータを自分の意思で管理するイメージです。

情報銀行とは、個人から預かったデータを、本人の同意のもとで企業などの第三者に提供し、その対価(ポイントやサービスなど)を本人に還元する事業者・仕組みのことです。

graph TB
  subgraph PDS経由
    direction TB
    P1["個人<br>(データの持ち主)"]:::primary
    PDS["PDS<br>(データ保管庫)"]:::base
    EA["企業A"]:::base
    EB["企業B"]:::base
    P1 -->|"自分でデータを<br>蓄積・管理"| PDS
    PDS -->|"本人の意思で提供"| EA
    PDS -->|"本人の意思で提供"| EB
  end

  subgraph 情報銀行経由
    direction TB
    P2["個人<br>(データの持ち主)"]:::primary
    BANK["情報銀行"]:::alert
    EC["企業C"]:::base
    ED["企業D"]:::base
    P2 -->|"データを預ける"| BANK
    BANK -->|"本人同意のもと提供"| EC
    BANK -->|"本人同意のもと提供"| ED
    EC -->|"対価"| BANK
    ED -->|"対価"| BANK
    BANK -->|"ポイント・<br>サービス還元"| P2
  end

  classDef base fill:#f8fafc,stroke:#94a3b8,stroke-width:1px,color:#333;
  classDef primary fill:#eff6ff,stroke:#2563eb,stroke-width:2px,color:#1e40af;
  classDef alert fill:#fef2f2,stroke:#dc2626,stroke-width:2px,color:#991b1b;
比較項目PDS情報銀行
データの管理者個人自身情報銀行(事業者)
データ提供の判断個人が都度判断情報銀行が本人同意の範囲で判断
対価の有無仕組みによるポイントやサービスなどで還元

試験で出るポイント

情報銀行は「個人のデータを預かり、本人同意のもとで第三者に提供する仕組み」です。PDSは「個人が自分でデータを管理・提供する仕組み」です。データ管理の主体が異なる点を押さえましょう。

まとめ ── ITの有効活用の全体像

Section titled “まとめ ── ITの有効活用の全体像”

このページで学んだITの活用手段を振り返りましょう。

分類キーワードひとことポイント
業務効率化ソフトウェアパッケージ既製品を導入して短期間で効率化
業務効率化グループウェアチームの情報共有・協働を支援
業務効率化オフィスツール文書作成・表計算など汎用的な業務ツール
業務効率化BYOD個人端末を業務利用(セキュリティに注意)
業務効率化テレワークICTで場所にとらわれず働く
業務効率化AI利活用顧客分析やプロセス自動化に活用
業務効率化IoTあらゆるモノがインターネットにつながる
業務効率化M2M機械同士が人間を介さず通信
コミュニケーションWeb会議リアルタイムの遠隔会議
コミュニケーション電子メール非同期のテキスト・ファイルやり取り
コミュニケーションチャット素早いメッセージのやり取り
コミュニケーション電子掲示板テーマ別の情報共有
コミュニケーションブログ記事形式の情報発信
コミュニケーションSMS電話番号宛の短文メッセージ
コミュニケーションSNSネット上で人とつながるサービス
データ活用シェアリングエコノミー遊休資産をネット経由で共有
データ活用ライフログ日常行動のデジタル記録
データ活用PDS個人が自分のデータを管理・提供
データ活用情報銀行個人データを預かり第三者に提供・還元

試験で出るポイント

この分野は用語の意味を正確に理解しているかが問われます。とくにBYOD・IoT・M2Mの違い、SMS・SNSの違い、情報銀行・PDSの違いは頻出です。似た名前の用語ほど、定義の違いを意識して覚えましょう。


過去問に挑戦

Q. A社の情報システム部門は,B社のソフトウェアパッケージを活用して,営業部門が利用する営業支援システムを構築することにした。構築に合わせて,EUC(End User Computing)を推進するとき,業務データの抽出や加工,統計資料の作成などの運用を行う組織として,最も適切なものはどれか。

  • ア A社の営業部門
  • イ A社の情報システム部門
  • ウ B社のソフトウェアパッケージ開発部門
  • エ B社のソフトウェアパッケージ導入担当部門
解答(令和3年)

正解: ア

Q. テレワークに関する記述として,最も適切なものはどれか。

  • ア ITを活用した,場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと
  • イ ある業務に対して従来割り当てていた人数を増員し,業務を細分化して配分すること
  • ウ 個人が所有するPCやスマートデバイスなどの機器を,会社が許可を与えた上でオフィスでの業務に利用させること
  • エ 仕事の時間と私生活の時間の調和に取り組むこと
解答(令和3年)

正解: ア

Q. BYODの事例として,適切なものはどれか。

  • ア 大手通信事業者から回線の卸売を受け,自社ブランドの通信サービスを開始した。
  • イ ゴーグルを通してあたかも現実のような映像を見せることで,ゲーム世界の臨場感を高めた。
  • ウ 私物のスマートフォンから会社のサーバにアクセスして,電子メールやスケジューラを利用することができるようにした。
  • エ 図書館の本にICタグを付け,簡単に蔵書の管理ができるようにした。
解答(令和3年)

正解: ウ

Q. BYODの事例として,適切なものはどれか。

  • ア 会社から貸与されたスマートフォンを業務中に私的に使用する。
  • イ 会社から貸与されたスマートフォンを業務で使用する。
  • ウ 会社が利用を許可した私物のスマートフォンを業務で使用する。
  • エ 私物のスマートフォンを業務中に私的に使用する。
解答(令和4年)

正解: ウ

Q. 住宅地に設置してある飲料の自動販売機に組み込まれた通信機器と,遠隔で自動販売機を監視しているコンピュータが,ネットワークを介してデータを送受信することによって在庫管理を実現するような仕組みがある。このように,機械同士がネットワークを介して互いに情報をやり取りすることによって,自律的に高度な制御や動作を行う仕組みはどれか。

  • ア MOT
  • イ MRP
  • ウ M2M
  • エ O2O
解答(令和5年)

正解: ウ

Q. インターネットを介して個人や企業が保有する住宅などの遊休資産の貸出しを仲介するサービスや仕組みを表す用語として,最も適切なものはどれか。

  • ア シェアードサービス
  • イ シェアウェア
  • ウ シェアリングエコノミー
  • エ ワークシェアリング
解答(令和6年)

正解: ウ

Q. A社はRPAソフトウェアを初めて導入するに当たり,計画策定フェーズ,先行導入フェーズ,本格導入フェーズの3段階で進めようと考えている。次のうち,計画策定フェーズで実施する作業として,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。

a RPAソフトウェアの適用可能性を見極めるための概念検証を実施する。

b RPAソフトウェアを全社展開するための導入と運用の手順書を作成する。

c 部門,業務を絞り込んでRPAソフトウェアを導入し,効果を実測する。

  • ア a
  • イ a,c
  • ウ b
  • エ b,c
解答(令和6年)

正解: ア

Q. 公共交通機関での移動履歴,Webサイトでの商品検索履歴,SNSやブログで発信したデータなど,個人の活動を記録する技術,又は記録そのものを表す用語として,最も適切なものはどれか。

  • ア アクティビティ
  • イ トランザクション
  • ウ ライフログ
  • エ レコードキーピング
解答(令和7年)

正解: ウ

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