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ビジネス戦略立案及び評価のための情報分析手法・目標設定手法

ビジネス戦略は、思いつきや経験だけで決めるものではありません。市場や顧客、自社の状況を分析したうえで、「何を成功条件とし、どんな目標を、どの指標で管理するか」を明確にしてはじめて実行できる戦略になります。この章では、戦略の立案から目標設定、評価までをつなぐ代表的な手法と用語を学びます。

ビジネス戦略では、次の流れで考えると整理しやすくなります。

  1. 外部環境・内部環境を分析する
  2. 成功のために重要な要因を絞り込む
  3. 達成すべき目標を設定する
  4. 進捗を測る指標を決める
  5. 実績を評価し、改善につなげる

この流れの中でよく使われるのが、CSFKGIKPIBSC などの用語です。

用語役割ひとことで言うと
CSF成功の鍵を明確にする何がうまくいけば戦略が成功するか
KGI最終目標を定める何を達成したいか
KPI途中経過を測るどのくらい進んでいるか
BSC多面的に評価する財務以外も含めて戦略を管理する

たとえば「学習アプリの有料会員を増やす」という戦略なら、KGI は「有料会員数を1年で20%増やす」、KPI は「無料体験から有料化への転換率」「継続率」などになります。

戦略立案では、集めた情報をそのまま並べるだけでは不十分です。数値や事実から「何が原因で、どこを改善すべきか」を考える基本的な推論が必要です。

たとえば売上が伸び悩んでいるとき、単に「売上が低い」と考えるのではなく、次のように分解して考えます。

  • 売上 = 客数 × 客単価
  • 客数 = 訪問者数 × 購入率
  • 有料会員数 = 新規加入者数 - 解約者数

このように指標を分解すると、「訪問者は多いが購入率が低い」「新規加入は多いが解約も多い」といった課題の所在が見えてきます。これが、情報に基づいて論理的に考える基本です。

推論するときのポイントは次のとおりです。

  • 事実と仮説を分ける: 「解約率が高い」は事実、「UIが使いにくいからだ」は仮説
  • 比較する: 前月比、競合比較、目標との差を見る
  • 分解する: 1つの結果を構成要素に分ける
  • 因果関係を意識する: 結果指標だけでなく、その原因となる行動指標を見る

試験で出るポイント

「情報分析手法」は難しい統計だけを指すわけではありません。ITパスポートでは、数値を分解して原因を考えたり、目標と実績を比較したりするような、基本的な情報活用の考え方も重要です。

CSF(Critical Success Factors:重要成功要因)は、戦略目標を達成するために「特にうまくやらなければならないこと」を示す考え方です。

すべての業務を同じ重さで管理すると、重要なポイントがぼやけます。そこで、「この戦略を成功させるために何が決定的に重要か」を絞り込むのが CSF です。

たとえば、サブスクリプション型の学習サービスで売上拡大を目指す場合、次のような CSF が考えられます。

  • 初回利用者が価値を実感できること
  • 継続利用したくなる学習体験を作ること
  • 広告費に依存しすぎず新規会員を獲得できること

CSF は「目標」そのものではなく、目標達成のための重要条件です。このあとに KGI や KPI を設定すると、戦略と指標がつながりやすくなります。

試験で出るポイント

CSF は「重要成功要因」です。「成功を左右する重要な要因」を表します。数値目標そのものではない点が KGI や KPI との違いです。

KGI(重要目標達成指標)と KPI(重要業績評価指標)

Section titled “KGI(重要目標達成指標)と KPI(重要業績評価指標)”

KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)は、最終的に達成したい目標を数値で表したものです。戦略が成功したかどうかを判断するためのゴール指標と考えるとわかりやすいです。

例:

  • 売上高を前年比 15% 増加させる
  • 有料会員数を年度末までに 1.2 倍にする
  • 顧客満足度を 80 点以上にする

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、KGI を達成するための途中経過を測る指標です。現場が日常的に追いかけるのは、通常 KGI よりも KPI です。

例:

  • 無料会員から有料会員への転換率
  • 月間継続率
  • 問い合わせ対応時間
  • アプリの1日あたり学習完了率

KGI と KPI は、次のような関係になります。

項目KGIKPI
位置づけ最終目標中間管理指標
見る頻度月次・四半期・年度など日次・週次・月次など
売上、利益、会員数訪問数、成約率、継続率、処理件数

たとえば KGI が「月間売上 500 万円」なら、KPI として「訪問者数」「購入率」「客単価」などを追うことで、目標未達の原因を把握しやすくなります。

試験で出るポイント

KGI は「最終的に達成したい目標指標」、KPI は「その達成度合いを途中で管理する指標」です。「経営目標」そのものか、「進捗を測る指標」かで区別しましょう。

KPIツリーは、KGI を達成するために必要な KPI を、要素分解しながら樹形図のように整理する手法です。

たとえば EC サイトの売上を KGI とする場合、次のように分解できます。

  • 売上
  • 訪問者数
  • 購入率
  • 客単価

さらに購入率を「商品ページ閲覧率」「カート投入率」「購入完了率」に分ければ、どこに課題があるかを具体的に見つけやすくなります。

KPIツリーの利点は次のとおりです。

  • 大きな目標を具体的な行動レベルまで落とし込める
  • 部門ごとの担当指標を決めやすい
  • 目標未達の原因を追跡しやすい

試験で出るポイント

KPIツリーは、目標をいきなり1つの数値で管理するのではなく、構成要素に分けて管理する考え方です。KGI と KPI をつなぐ実務的な手法として押さえましょう。

目標は、単に「売上を伸ばす」「満足度を高める」では曖昧です。そこで使われるのが SMART です。SMART は、良い目標が備えるべき性質を示したフレームワークです。

文字意味内容
SSpecific具体的である
MMeasurable測定可能である
AAchievable達成可能である
RRelevant戦略や目的と関連している
TTime-bound期限が明確である

たとえば「顧客満足度を上げる」という目標は曖昧ですが、「3か月以内にサポート満足度を 70 点から 80 点へ引き上げる」であれば SMART に近づきます。

SMART を使うと、次のような曖昧さを防げます。

  • 何を達成するのかが不明確
  • 測れないので評価できない
  • 現実的でないため実行されない
  • 期限がなく先送りされる

試験で出るポイント

SMART は「良い目標設定の条件」です。特に Measurable(測定可能)Time-bound(期限がある) は、KPI や評価と結びつけて問われやすいポイントです。

GROWモデルは、目標設定や行動計画づくりに使われるフレームワークです。コーチングの場面で使われることが多いですが、チームや個人の目標設定にも応用できます。

文字意味内容
GGoal目標を明確にする
RReality現状を把握する
OOptions選択肢を洗い出す
WWill何を実行するか決める

たとえば営業部門で「新規顧客を増やしたい」と考えるとき、GROWモデルでは次のように整理します。

  1. Goal: 今期中に新規契約件数を 20% 増やす
  2. Reality: 現在は問い合わせ数は多いが成約率が低い
  3. Options: 提案資料の改善、商談フロー見直し、ターゲット変更
  4. Will: 今月中に提案資料を改訂し、来月から運用する

GROWモデルは、目標だけで終わらず、現状分析と具体的な行動に落とし込める点が強みです。

BSC(Balanced Scorecard:バランススコアカード)は、企業の戦略を多面的に評価するための手法です。財務指標だけでなく、顧客・業務プロセス・学習と成長も含めてバランスよく管理します。

BSC では、一般に次の4つの視点を使います。

視点内容指標の例
財務の視点収益性や成長性を見る売上高、利益率、ROI
顧客の視点顧客にどう見られているかを見る顧客満足度、継続率、シェア
業務プロセスの視点社内業務がうまく回っているかを見る納期遵守率、不良率、処理時間
学習と成長の視点将来の成長基盤を見る研修受講率、離職率、スキル保有率

たとえば利益だけを見ると短期的なコスト削減に偏りがちですが、BSC を使えば「顧客満足度が落ちていないか」「将来の成長につながる人材育成ができているか」も同時に確認できます。

BSC の重要な考え方は、4つの視点がばらばらではなく、因果関係でつながっていることです。たとえば「学習と成長」の強化が「業務プロセス」の改善につながり、その結果として「顧客満足」が上がり、最終的に「財務」成果が向上する、という形で考えます。

試験で出るポイント

BSC は「財務指標だけで経営を評価しない」ための手法です。4つの視点の名称と役割の対応を正確に覚えましょう。

バリューエンジニアリング(Value Engineering)は、製品やサービスの価値を高めるための考え方です。価値は一般に次のように表されます。

価値 = 機能 ÷ コスト

つまり、価値を高めるには次の2つの方向があります。

  • 同じコストで機能を高める
  • 同じ機能でコストを下げる

ここで重要なのは、単なるコスト削減とは違う点です。必要な機能まで落としてしまうと、価値は高まりません。あくまで「顧客にとって必要な機能を見極めたうえで、価値を最適化する」ことが目的です。

たとえば家電メーカーが、利用頻度の低い高コスト部品を見直し、よく使われる機能の使いやすさを向上させつつ製造コストを下げられれば、価値向上につながります。

試験で出るポイント

バリューエンジニアリングは「価値を機能とコストの関係で捉える」考え方です。単なる値下げや単純な原価削減と混同しないようにしましょう。

これらの手法をどう組み合わせるか

Section titled “これらの手法をどう組み合わせるか”

実務では、これらの手法を単独で使うより、流れとして組み合わせます。

  1. 情報分析によって現状と課題を把握する
  2. CSF を定めて、成功の鍵を明確にする
  3. SMART を意識して KGI を設定する
  4. KPIツリーで KGI を分解し、KPI を決める
  5. BSC で多面的に評価し、必要なら戦略を修正する

たとえば「法人向けクラウドサービスを拡大する」という戦略なら、次のように整理できます。

項目
CSF解約率を下げ、導入後の定着率を高めること
KGI年間売上を前年比 120% にする
KPI新規契約数、継続率、問い合わせ初回解決率
BSC の顧客視点顧客満足度、継続利用率
BSC の業務プロセス視点導入支援完了までの日数

このように整理すると、「どの戦略を」「何で測り」「どう改善するか」が一貫します。

この章のポイントを最後に整理します。

用語要点
CSF戦略成功のために特に重要な要因
KGI最終目標を表す指標
KPIKGI 達成までの進捗を測る指標
KPIツリーKGI を構成要素に分解して管理する手法
SMART良い目標設定の条件
GROWモデル目標設定から行動決定までを整理する手法
BSC財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4視点で戦略を評価する手法
バリューエンジニアリング機能とコストの関係から価値向上を考える手法

試験で出るポイント

この分野は、略語と意味の対応を問う問題が多く出ます。特に BSC・CSF・KGI・KPI は頻出です。「何を表す指標か」「目標か途中管理か」「どの視点で評価するか」を区別して覚えましょう。

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