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経営情報分析手法

企業が経営戦略を立てるとき、「なんとなく」ではなく、自社の置かれた状況を体系的に分析することが重要です。この章では、経営戦略の策定に使われる代表的な経営情報分析手法を学びます。それぞれの手法が「何を」「どの視点で」分析するのかを理解しましょう。

経営分析の出発点は、企業を取り巻く環境を「外部環境」と「内部環境」に分けて整理することです。

区分説明
外部環境企業の外側にあり、自社ではコントロールしにくい要因市場動向、競合他社の動き、法規制、技術革新、景気
内部環境企業の内側にあり、自社で管理・改善できる要因自社の技術力、人材、ブランド力、資金力、組織体制

外部環境はさらに、業界全体に影響するマクロ環境(政治・経済・社会・技術などの大きな潮流)と、自社の事業に直接関わるミクロ環境(顧客・競合・取引先など)に分けられます。これから紹介する各分析手法は、外部環境と内部環境のどちらか(あるいは両方)に焦点を当てています。

SWOT分析は、経営情報分析手法の中で最も基本的なフレームワークです。自社の状況を次の4つの要素で整理します。

要素英語区分内容
S(強み)Strengths内部環境 × プラス自社が競合より優れている点
W(弱み)Weaknesses内部環境 × マイナス自社が競合に劣っている点
O(機会)Opportunities外部環境 × プラス自社に有利な外部の変化
T(脅威)Threats外部環境 × マイナス自社に不利な外部の変化

SWOT分析のポイントは、内部環境(S・W)と外部環境(O・T)を掛け合わせて戦略を導き出す点にあります。たとえば、あるカフェチェーンの分析を考えてみましょう。

  • S(強み): 独自の焙煎技術、高いブランド認知度
  • W(弱み): 店舗数が少ない、価格が競合より高い
  • O(機会): リモートワーク普及で自宅用コーヒー需要が増加
  • T(脅威): コンビニコーヒーの品質向上、原材料の高騰

ここから「強み × 機会」の組み合わせで「独自焙煎のこだわり豆をオンライン販売する」といった攻めの戦略を立てたり、「弱み × 脅威」の組み合わせで「価格競争を避け、高付加価値路線に集中する」といった守りの戦略を立てたりします。このように4要素を掛け合わせて戦略オプションを洗い出す手法をクロスSWOT分析と呼びます。

試験で出るポイント

SWOT分析は「内部環境と外部環境」「プラス要因とマイナス要因」の2軸で整理する手法です。試験では「次のうちSWOT分析の”機会”に該当するものはどれか」のように、4要素の分類を問う問題が出ます。内部か外部か、プラスかマイナスかの2つの軸で判断しましょう。

PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)

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PPM(Product Portfolio Management:プロダクトポートフォリオマネジメント)は、企業が持つ複数の製品や事業を2つの指標で評価し、経営資源の最適配分を考えるための手法です。

PPMでは、縦軸に市場成長率、横軸に相対マーケットシェア(市場占有率)をとった2×2のマトリクスを使い、製品・事業を4つの象限に分類します。

象限市場成長率マーケットシェア特徴
花形(Star)高い高い成長市場でシェアも高い。売上は大きいが、成長維持のための投資も必要
金のなる木(Cash Cow)低い高い成熟市場でシェアが高い。大きな投資なしに安定した利益を生む
問題児(Question Mark)高い低い成長市場だがシェアが低い。シェア拡大には多額の投資が必要
負け犬(Dog)低い低い成熟市場でシェアも低い。撤退を検討する対象

たとえば、ある食品メーカーを例に考えてみましょう。

  • 花形: 健康志向の新しいプロテインバー(市場が急成長し、シェアも高い)
  • 金のなる木: 定番のインスタントラーメン(市場は成熟しているが、圧倒的シェアで安定利益)
  • 問題児: 最近参入した冷凍弁当(市場は成長中だが、まだシェアが低い)
  • 負け犬: 売れ行き不振の缶詰シリーズ(市場も縮小し、シェアも低い)

PPMの基本的な考え方は、「金のなる木が生み出す利益を、問題児花形に投資する」ことで、企業全体のバランスを取ることです。

試験で出るポイント

PPMは非常に頻出のテーマです。「横軸に相対マーケットシェア、縦軸に市場成長率」という2軸の構成と、4つの象限の名称・特徴を正確に覚えましょう。特に「市場シェアは低いが急成長市場にあり、多くの資金投入が必要な領域はどれか?」→「問題児」のように、特徴から象限名を答える問題が頻出です。

3C分析は、次の3つの「C」の視点から事業環境を分析する手法です。

要素英語分析内容
顧客Customer市場の規模、成長性、顧客のニーズや購買行動
競合Competitor競合他社の戦略、強み・弱み、市場シェア
自社Company自社の経営資源、技術力、ブランド力

3C分析の特徴は、外部環境(顧客・競合)と内部環境(自社)の両方を1つのフレームワークで見渡せる点です。たとえば、新しいスマートフォンアプリを開発する企業であれば、次のように分析します。

  • Customer(顧客): 20〜30代のビジネスパーソンがターゲット。時短ニーズが高い
  • Competitor(競合): 大手企業A社が類似アプリで市場シェア1位。価格は月額500円
  • Company(自社): AI技術に強みがある。ただしマーケティング力は弱い

この分析から「AI技術を活かした差別化機能で、大手にはない独自価値を提供する」といった戦略の方向性が見えてきます。

試験で出るポイント

3C分析は「Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つのCです。試験では「3C分析の説明として適切なものはどれか」という形式で出題されます。SWOT分析やPEST分析との違いを整理しておきましょう。

VRIO分析は、自社の経営資源(技術、人材、ブランドなど)が持続的な競争優位の源泉になるかどうかを評価する手法です。次の4つの問いに順番に答えていきます。

要素英語問い
VValue(経済価値)その資源は経済的な価値があるか?
RRarity(希少性)その資源は希少か?(競合が持っていないか?)
IInimitability(模倣困難性)その資源は真似されにくいか?
OOrganization(組織)その資源を活かせる組織体制が整っているか?

4つすべてに「Yes」と答えられる資源は、持続的な競争優位の源泉となります。たとえば、トヨタ自動車の「トヨタ生産方式(かんばん方式)」を考えると、経済的価値がある(V: Yes)、他社にはない独自のノウハウ(R: Yes)、長年の蓄積で簡単には真似できない(I: Yes)、それを実行できる組織体制が整っている(O: Yes)となり、持続的競争優位と評価できます。

VRIO競争優位の状態
No競争劣位
YesNo競争均衡(他社と同程度)
YesYesNo一時的な競争優位
YesYesYesNo活用されていない競争優位
YesYesYesYes持続的な競争優位

試験で出るポイント

VRIO分析は「経済価値・希少性・模倣困難性・組織」の4要素で自社の経営資源を評価する手法です。試験では「VRIO分析の説明として適切なものはどれか」や、4要素の名称を問う問題が出題されています。

PEST分析は、企業を取り巻くマクロ環境(外部環境のうち、業界全体や社会全体に影響する大きな要因)を4つの視点から分析する手法です。

要素英語分析対象の例
PPolitics(政治)法規制の変更、税制改正、政府の政策、貿易規制
EEconomy(経済)景気動向、為替レート、金利、物価変動
SSociety(社会)人口動態、高齢化率、ライフスタイルの変化、価値観の多様化
TTechnology(技術)技術革新、IT普及率、新技術の登場、特許動向

PEST分析は、3C分析やSWOT分析の「外部環境」をより詳しく掘り下げるときに使います。たとえば、一般消費者向けの製品を製造しているメーカーが新製品開発にあたってPEST分析を行う場合、「我が国の高齢化率」は社会(S)の視点に該当する情報であり、「競合企業のシェア」はPEST分析ではなく3C分析で扱う情報です。

試験で出るポイント

PEST分析はマクロ環境の分析手法です。試験では「PEST分析で収集すべき情報はどれか」という形式で、マクロ環境の情報(法規制、高齢化率など)とミクロ環境の情報(競合他社の動向、取引先の情報など)を区別させる問題が出ます。

フェルミ推定とは、実際に調査することが難しい数量について、手持ちの知識や論理的な推論を組み合わせて概算値を導き出す手法です。名前はノーベル物理学賞を受賞した物理学者エンリコ・フェルミに由来します。

典型的な例題として「日本にピアノの調律師は何人いるか?」があります。正確なデータがなくても、次のように推論を積み重ねて概算できます。

  1. 日本の世帯数:約5,000万世帯
  2. ピアノ保有率:約10%(500万台)
  3. 調律の頻度:年1回
  4. 調律師が1日に対応できる件数:3件 × 年間250日 = 年間750件
  5. 必要な調律師数:500万件 ÷ 750件 ≒ 約6,700人

フェルミ推定は、経営戦略やマーケティングにおける市場規模の概算にも活用されます。新規事業を検討する際に、「この市場はどのくらいの規模がありそうか」を短時間で見積もるのに有効です。

試験で出るポイント

フェルミ推定は「調査が難しい数量を、論理的な推論で概算する手法」です。試験では手法の説明として正しいものを選ぶ形式で出題されています。

ここまで学んだ分析手法の特徴を整理しましょう。

分析手法主な分析対象特徴
SWOT分析内部環境 + 外部環境強み・弱み・機会・脅威の4要素で総合的に分析
PPM自社の製品・事業群市場成長率とシェアで経営資源の配分を決定
3C分析顧客・競合・自社事業環境を3つの視点で分析
VRIO分析自社の経営資源経営資源が競争優位の源泉になるかを評価
PEST分析外部のマクロ環境政治・経済・社会・技術の4視点で外部環境を分析
フェルミ推定未知の数量論理的推論で概算値を導く

実際の経営戦略の策定では、これらの手法を組み合わせて使います。たとえば、まずPEST分析でマクロ環境を把握し、3C分析で事業環境を整理し、SWOT分析で戦略の方向性を導き出す——といった流れです。

試験で出るポイント

各分析手法の名称と特徴の対応を正確に覚えましょう。「横軸に相対マーケットシェア、縦軸に市場成長率」→ PPM、「顧客・競合・自社」→ 3C分析、「政治・経済・社会・技術」→ PEST分析、「経済価値・希少性・模倣困難性・組織」→ VRIO分析、のようにキーワードから手法名を答えられるようにしておくことが大切です。

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