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経営戦略に関する用語

経営戦略を語るとき、さまざまな専門用語が登場します。この章では、ITパスポート試験に頻出の経営戦略に関する用語を、「競争戦略」「企業間連携」「事業構造」「その他の重要用語」の4つのカテゴリに分けて体系的に学びます。

競争優位とは、他社と比べて優れた成果を生み出せる状態のことです。単に「良い製品を持っている」というだけでなく、持続的に競合より高い成果を出し続けられることが重要です。

この競争優位の源泉となる、自社の中核的な能力をコアコンピタンスと呼びます。コアコンピタンスは次の3つの条件を満たすものです。

  1. 顧客に価値を提供できる(顧客にとって意味がある)
  2. 競合他社が模倣しにくい(簡単には真似できない)
  3. 複数の市場に展開できる(応用範囲が広い)

たとえば、ホンダのエンジン技術は自動車・バイク・発電機・芝刈り機など幅広い製品に活用されており、長年の蓄積で他社が容易に模倣できないため、コアコンピタンスの典型例とされます。

ニッチ戦略は、大企業が手を出さないような小さな市場(ニッチ市場)に特化して、そこで高いシェアを獲得する戦略です。「すきま」を意味する英語 niche に由来します。たとえば、特定の業種向けに特化した業務ソフトウェアを開発する企業は、ニッチ戦略をとっているといえます。

一方、同質化戦略は、競合他社の製品やサービスと同等のものを提供して差別化を打ち消す戦略です。主に市場リーダー(シェア1位の企業)が、チャレンジャー企業の差別化を無力化するために用います。たとえば、ある企業が画期的な新機能を発売したとき、業界最大手がすぐに同様の機能を自社製品に搭載して対抗するのが同質化戦略です。

ブルーオーシャン戦略は、競合がひしめく既存市場(レッドオーシャン=血みどろの競争が繰り広げられる赤い海)ではなく、競争のない未開拓の市場(ブルーオーシャン=青い海)を自ら創り出して事業を展開する戦略です。

レッドオーシャンでは価格競争やシェア争いに陥りがちですが、ブルーオーシャンでは新しい価値を提供することで競争そのものを避けられます。たとえば、任天堂のWiiは、従来のゲーム機がグラフィック性能を競い合っていた市場(レッドオーシャン)に対し、「家族みんなで体を動かして遊べるゲーム機」という新しい価値を提案し、それまでゲームをしなかった層を取り込みました。

コモディティ化とは、もともと差別化されていた製品やサービスが、技術の普及や競合の参入によって品質や機能に大きな差がなくなり、価格だけで選ばれるようになる現象です。「日用品化」ともいいます。

たとえば、かつてはメーカーによって大きく性能が異なったパソコンも、現在は基本性能が横並びになり、価格が購入の主要な判断基準になっています。コモディティ化が進むと企業の利益率が低下するため、企業はブランド力の強化やサービスの付加価値向上などで差別化を図ります。

ベンチマーキングとは、業界の優良企業や他業種の優れた事例を基準(ベンチマーク)として、自社の業務プロセスや成果と比較・分析し、改善に活かす手法です。

たとえば、自社の配送業務の効率を改善したいとき、物流業界のトップ企業の配送プロセスを調査・比較し、自社との差を分析して改善策を導き出す——これがベンチマーキングです。

アライアンスとは、複数の企業が互いの強みを活かすために提携・協力関係を結ぶことです。自社が保有していない技術やノウハウを他社から短期間で補完できる点が大きなメリットです。

アライアンスにはさまざまな形態があります。

形態説明
ジョイントベンチャ(合弁事業)複数の企業が共同出資して新しい会社を設立し、事業を共同で運営する
業務提携資本関係を持たずに、特定の分野で協力関係を結ぶ
資本提携相互に株式を持ち合うことで関係を強化する

試験で出るポイント

アライアンスは「企業間の提携・協力」、ジョイントベンチャは「共同出資による新会社設立」です。試験では「自社にない技術を短期間で補完する手段は?」→「アライアンス」、「共同出資で新会社を設立する形態は?」→「ジョイントベンチャ」と、それぞれの特徴の違いを問う問題が繰り返し出題されています。

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、企業の合併(Mergers)と買収(Acquisitions)の総称です。

種類説明
合併2つ以上の企業が1つの企業に統合される
買収ある企業が他の企業の株式や事業を取得して支配下に置く

M&Aには次のような関連用語があります。

  • MBO(Management Buyout): 経営陣が自社の株式を買い取って、経営権を取得すること。上場企業が非公開化する(株式市場から退出する)際などに用いられます
  • TOB(Take Over Bid): 株式の公開買付け。買収を目的として、株主に対して「この価格で株を売ってください」と公に申し出る制度です

アウトソーシングとは、自社の業務の一部を外部の専門企業に委託することです。自社のコアコンピタンスに経営資源を集中し、それ以外の業務は外部の専門家に任せることで、効率化とコスト削減を図ります。

たとえば、IT企業がサーバーの運用管理を外部のデータセンター事業者に委託したり、経理業務を会計事務所に委託したりすることがアウトソーシングにあたります。

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、相手先ブランドで販売される製品を製造することです。製造元のブランドではなく、発注元のブランド名で販売されます。

たとえば、コンビニのプライベートブランド(PB)商品は、実際には別のメーカーがOEMで製造していることが多いです。製造を受託する側は工場の稼働率を上げられ、発注側は自社で製造設備を持たずに自社ブランド商品を販売できるというメリットがあります。

ファブレス(fabless)とは、自社で工場(fabrication facility = fab)を持たない経営形態です。製品の企画・設計・マーケティングに集中し、製造は外部の工場に委託します。

代表的なファブレス企業として、半導体チップの設計に特化し製造はTSMCなどに委託するQualcommNVIDIA、ゲーム機やソフトウェアの企画・開発を行うが製造は外部に委託する任天堂などが挙げられます。

フランチャイズチェーンとは、本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に対して、商標の使用権やノウハウ、経営指導などを提供し、加盟店はその対価としてロイヤルティ(使用料)を本部に支払うビジネスモデルです。

コンビニエンスストア(セブン-イレブン、ファミリーマートなど)やファストフード店(マクドナルドなど)が代表例です。本部は少ない投資で店舗を増やすことができ、加盟店は実績あるブランドとノウハウを活用できるメリットがあります。

規模の経済とは、生産量を増やすほど、製品1個あたりのコストが下がる現象です。大規模に生産すると、工場の設備費や管理費といった固定費が多くの製品に分散されるため、1個あたりのコストが低くなります。

たとえば、工場の家賃が月100万円で、100個生産すれば1個あたり1万円の負担ですが、1,000個生産すれば1個あたり1,000円に下がります。これが規模の経済です。

経験曲線(経験曲線効果)とは、ある製品の累積生産量が増えるにつれて、単位あたりのコストが一定の割合で低下していく現象です。作業の習熟、工程の改善、技術の進歩などにより、経験を積むほど効率が上がるためです。規模の経済が「一度にたくさん作るとコストが下がる」のに対し、経験曲線は「たくさん作ってきた経験の蓄積でコストが下がる」という違いがあります。

垂直統合とは、原材料の調達から製造、流通、販売までのサプライチェーン(供給連鎖)の上流や下流の工程を自社に取り込むことです。

方向説明
川上統合(後方統合)原材料の供給元を自社に取り込む製造業者が原材料メーカーを買収する
川下統合(前方統合)販売・流通チャネルを自社に取り込むメーカーが直営店を展開する

たとえば、アップルが自社で半導体チップを設計・開発し、自社の直営店(Apple Store)で販売するのは、川上(部品設計)と川下(小売)の両方を統合している例です。

イノベーションとは、技術革新だけでなく、新しいアイデアや仕組みによって社会に大きな変化をもたらす革新のことです。新しい製品・サービスの創出、新しいビジネスモデルの構築、新しい市場の開拓などを含む幅広い概念です。

デジタルディスラプションとは、デジタル技術を活用した革新的なサービスやビジネスモデルが、既存の業界構造を根本的に破壊・変革してしまう現象です。

たとえば、ネットフリックスなどの動画配信サービスがレンタルビデオ店を消滅させたり、UberやLyftがタクシー業界に大きな変革をもたらしたりしたことが、デジタルディスラプションの代表例です。

試験で出るポイント

デジタルディスラプションは「デジタル技術によって既存の業界構造が破壊される現象」です。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」や「デジタルデバイド」との区別を問う問題が出題されています。DXは「デジタル技術で企業や社会を変革すること」、デジタルデバイドは「IT活用の格差」であり、混同しないようにしましょう。

カニバリゼーション(共食い)とは、自社の新製品が自社の既存製品のシェアを奪ってしまう現象です。英語の「cannibalize(共食いする)」に由来します。

たとえば、ある飲料メーカーが新しい炭酸飲料を発売したところ、新商品が売れた分だけ自社の既存炭酸飲料の売上が落ちてしまった——これがカニバリゼーションです。企業は新製品を投入する際、既存製品とのカニバリゼーションのリスクを考慮する必要があります。

ビジネスにおけるエコシステム(生態系)とは、複数の企業が互いに協力・依存し合いながら、共存共栄する事業環境のことです。

たとえば、スマートフォンのエコシステムでは、端末メーカー、OS提供者(AppleやGoogle)、アプリ開発者、通信キャリア、周辺機器メーカーなどが互いに価値を提供し合い、全体として大きな市場を形成しています。

ロジスティクスとは、原材料の調達から製品の配送までの物流全体を戦略的に管理・最適化する考え方です。単なる「運ぶ」だけの物流ではなく、在庫管理、倉庫管理、配送計画、物流コストの最適化などを含む包括的なマネジメントの概念です。

ESG投資とは、Environment(環境)Social(社会)Governance(ガバナンス=企業統治) の3つの要素を考慮した投資のことです。

従来の投資判断は財務情報(売上、利益など)が中心でしたが、ESG投資では「環境問題に配慮しているか」「社会的責任を果たしているか」「企業統治が適切か」といった非財務的な要素も投資判断に組み込みます。近年、ESGを重視する投資家が増えており、企業側もESGへの取り組みを積極的にアピールするようになっています。

IPランドスケープ(Intellectual Property Landscape)とは、事業情報や経営情報に知的財産(特許など)の情報を組み込んで分析し、その結果を経営戦略に反映させる活動です。

たとえば、新規事業に参入する際に、関連する特許の出願状況を調査・分析することで、競合企業の技術開発の方向性や、自社が参入可能な技術領域を把握できます。分析結果を経営者や事業責任者と共有し、戦略的な意思決定に活用します。

試験で出るポイント

IPランドスケープは「知財情報を経営・事業戦略に活用する」という点がポイントです。「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)」や「オープンイノベーション」など、似たような文脈で使われる用語との区別が問われます。

最後に、この章で学んだ主要な用語を分類して整理します。

カテゴリ用語
競争戦略競争優位、コアコンピタンス、ニッチ戦略、同質化戦略、ブルーオーシャン戦略、コモディティ化、ベンチマーキング
企業間連携アライアンス、ジョイントベンチャ、M&A、MBO、TOB、アウトソーシング、OEM、ファブレス、フランチャイズチェーン
事業構造規模の経済、経験曲線、垂直統合
イノベーションイノベーション、デジタルディスラプション、カニバリゼーション
その他エコシステム、ロジスティクス、ESG投資、IPランドスケープ

試験で出るポイント

この分野は用語の数が多いですが、試験ではそれぞれの用語の定義と具体例が問われます。特にアライアンスM&A(MBO・TOBを含む)、ブルーオーシャン戦略コアコンピタンスは頻出です。「この説明に該当する用語はどれか」という形式に対応できるよう、各用語の特徴を端的に言い表せるようにしておきましょう。

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