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論理的な記述

私たちが日常で使う言葉(自然言語)には、あいまいさがつきものです。たとえば「先生に怒られた子供の母親」という文は、「怒られたのは子供」なのか「怒られたのは母親」なのか、文の構造だけでは判断できません。こうしたあいまいさは、コンピュータやAIが情報を正確に処理するうえで大きな障害となります。

そこで、自然言語の文を記号を用いて論理的に表現する方法が重要になります。論理的な記述を使えば、意味を一通りに確定でき、コンピュータによる推論やプログラムの正しさの検証にも活用できます。この章では、論理的な記述の基本となる述語論理と、結論を導く2つの推論方法(演繹推論帰納推論)を学びます。

まず、論理的な記述の出発点となる「命題」について確認しましょう。命題とは、真(正しい)か偽(正しくない)かが明確に決まる文のことです。

  • 「5は奇数である」→ 真(正しい)なので命題
  • 「東京は日本の首都である」→ 真なので命題
  • 「明日は天気がよい」→ 真偽が確定しないので命題ではない

命題を扱う論理にはいくつかの体系がありますが、ITパスポート試験で押さえておきたいのが述語論理です。

述語論理とは、命題の内部構造に踏み込んで、「何が」「どうである」という関係を記号で表す方法です。たとえば「太郎は学生である」という文は、「学生である(太郎)」のように、述語「学生である」と対象「太郎」に分けて表現します。

述語論理では、対象の範囲を指定する量化(りょうか)という仕組みが使えます。代表的なものは次の2つです。

量化の種類意味記号での表し方の例
全称量化(ぜんしょうりょうか)「すべてのXはYである」∀x: 学生(x) → 勉強する(x)
存在量化(そんざいりょうか)「あるXはYである」∃x: 学生(x) ∧ サッカー部(x)

たとえば「すべての学生は勉強する」は全称量化、「ある学生はサッカー部に所属している」は存在量化を使って表現します。このように、自然言語のあいまいさを排除し、正確に意味を伝えられるのが述語論理の強みです。

試験で出るポイント

述語論理の記号そのものを書く問題は出ませんが、「自然言語の文を記号を用いて論理的に表現する」という考え方が述語論理であることを理解しておきましょう。

論理的な記述を使って、新しい結論を導き出すことを推論といいます。推論にはいくつかの方法がありますが、まず演繹推論(えんえきすいろん)を見ていきましょう。

演繹推論とは、一般的なルール(前提)から、個別の結論を論理的に導き出す推論方法です。前提が正しければ、導かれる結論は必ず正しいという特徴があります。

演繹推論の代表的な形が三段論法です。次の例を見てみましょう。

  1. 大前提(一般的なルール):「すべての人間は死ぬ」
  2. 小前提(個別の事実):「ソクラテスは人間である」
  3. 結論:「ソクラテスは死ぬ」

このように、「すべてのAはBである」「CはAである」という2つの前提から、「CはBである」という結論を導くのが三段論法です。前提が正しい限り、結論も必ず正しくなります。

もう1つ身近な例を挙げましょう。

  1. 大前提:「20歳未満の人はお酒を買えない」
  2. 小前提:「太郎は15歳である(=20歳未満)」
  3. 結論:「太郎はお酒を買えない」

演繹推論は、数学の証明やプログラムの正しさの検証など、確実な結論が必要な場面で使われます。

演繹推論とは反対の方向で結論を導くのが帰納推論(きのうすいろん)です。

帰納推論とは、複数の個別の事例(観察結果)から、共通するパターンを見つけ出し、一般的なルールを導き出す推論方法です。ただし、演繹推論と異なり、導かれた結論は必ずしも正しいとは限りません

具体例を見てみましょう。

  1. 事例1:「カラスAは黒い」
  2. 事例2:「カラスBは黒い」
  3. 事例3:「カラスCは黒い」
  4. 結論:「すべてのカラスは黒い」

観察した3羽がすべて黒かったことから、「すべてのカラスは黒い」という一般的なルールを導いています。しかし、世界には白いカラス(アルビノ)も存在するため、この結論は成立しないことがあります。これが帰納推論の重要な特徴です。

試験で出るポイント

過去の試験(2022年 問57)で「帰納推論は個々の事例を基にして、事例に共通する規則を得る方法であり、得られた規則は成立しないことがある」が正しい記述として出題されています。帰納推論の「結論が確実ではない」という性質は必ず押さえておきましょう。

2つの推論方法の違いを表で整理しましょう。

比較項目演繹推論帰納推論
推論の方向一般的なルール → 個別の結論個別の事例 → 一般的なルール
結論の確実性前提が正しければ結論は必ず正しい結論が成立しないことがある
代表的な手法三段論法観察・実験からの法則の発見
活用例数学の証明、論理的な議論科学の仮説形成、データ分析

帰納推論の考え方は、現代のAI(人工知能)技術にも深く関わっています。機械学習は、大量のデータ(個別の事例)からパターンやルールを自動的に見つけ出す技術であり、帰納推論の一種と捉えることができます。

たとえば、迷惑メールのフィルタリングでは、過去に届いた大量のメール(事例)から「こういう特徴を持つメールは迷惑メールである」というルールを学習します。ただし、帰納推論の性質上、学習したルールが常に正しいとは限らないため、正常なメールを迷惑メールと判定してしまうこともあります。

試験で出るポイント

演繹推論と帰納推論の違いは、「推論の方向」と「結論の確実性」の2点で区別しましょう。演繹は「一般→個別、結論は確実」、帰納は「個別→一般、結論は不確実」と覚えると整理しやすくなります。

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