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障害年金・遺族年金

公的年金は老後の生活を支える老齢年金だけでなく、現役世代の被保険者が病気・けがで障害状態になった場合の障害年金死亡した場合に遺族へ支給される遺族年金もカバーしています。社会保険としての公的年金が「老齢・障害・死亡」という3つの保険事故に対する総合的な所得保障であることが、この章のポイントです。

ここでは、障害基礎年金・障害厚生年金遺族基礎年金・遺族厚生年金、そして遺族厚生年金に上乗せされる中高齢寡婦加算や、第1号被保険者の遺族向けの寡婦年金・死亡一時金までを整理します。FP3級学科試験では、受給対象者の範囲(特に「子のある配偶者または子」)と**給付額の倍率(1級は2級の1.25倍、遺族厚生は報酬比例の3/4)**を中心に頻出する分野です。

障害年金 ── 病気・けがで障害状態になったとき

Section titled “障害年金 ── 病気・けがで障害状態になったとき”

障害年金は、被保険者が病気やけがにより一定の障害状態になったときに支給される年金です。1階部分の障害基礎年金と、2階部分の障害厚生年金で構成されています。

障害基礎年金 ── 国民年金共通の障害保障

Section titled “障害基礎年金 ── 国民年金共通の障害保障”

障害基礎年金は、次のいずれかの時点で初診日(障害の原因となった病気・けがで初めて医師の診療を受けた日)がある場合に支給されます。

  • 国民年金の被保険者期間中
  • 60歳以上65歳未満で、日本国内に住所がある間
  • 20歳前(年金未加入の時期)

さらに、保険料納付要件(次のいずれか)を満たす必要があります。

  • 初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間の合計が3分の2以上
  • または、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない(特例。2026年3月末までの初診日に適用)

支給される障害等級は1級・2級の2段階です。年金額は次のとおりで、1級は2級の1.25倍となります。

等級年金額(2025年度)計算式
1級1,039,625円/年老齢基礎年金満額 × 1.25
2級831,700円/年老齢基礎年金満額(と同額)

これに加え、生計を維持されている18歳到達年度末までの子(障害等級1・2級なら20歳未満)がいる場合は子の加算が付きます(2025年度:第1子・第2子は各239,300円、第3子以降は各79,800円)。

試験で出るポイント

障害基礎年金には**「子の加算」はあるが「配偶者加算」はありません**。配偶者加算は障害厚生年金にあります。「障害基礎年金に配偶者加算がある」は典型的な誤答選択肢です。

障害厚生年金 ── 厚生年金被保険者の上乗せ

Section titled “障害厚生年金 ── 厚生年金被保険者の上乗せ”

障害厚生年金は、初診日が厚生年金保険の被保険者期間中にあり、かつ障害基礎年金と同様の保険料納付要件を満たす場合に支給されます。給付には次の3段階+一時金があります。

等級・区分障害基礎年金との関係給付内容
1級障害基礎年金(1級)+障害厚生年金(1級=報酬比例×1.25)+配偶者加給年金厚年と基礎の両方
2級障害基礎年金(2級)+障害厚生年金(2級=報酬比例)+配偶者加給年金厚年と基礎の両方
3級障害厚生年金のみ(障害基礎年金は支給されない厚生年金のみ。最低保障額あり
障害手当金障害厚生年金(一時金)3級に該当しない程度の障害に支給される一時金

最大のポイントは、3級は障害厚生年金のみ障害基礎年金は支給されないことです。「3級でも障害基礎年金がもらえる」は誤答パターンの定番です。

試験で出るポイント

「障害厚生年金3級は障害基礎年金もセットで支給される」は誤り。3級は厚生年金のみで、最低保障額が設定されています。逆に1級・2級では障害基礎年金と障害厚生年金が両方支給され、さらに配偶者加給年金が加算されます。

遺族年金 ── 被保険者が死亡したとき

Section titled “遺族年金 ── 被保険者が死亡したとき”

遺族年金は、被保険者または被保険者であった者が死亡したときに、その者によって生計を維持されていた遺族に支給される年金です。1階部分の遺族基礎年金と、2階部分の遺族厚生年金で構成されます。

遺族基礎年金 ── 「子のある配偶者または子」限定

Section titled “遺族基礎年金 ── 「子のある配偶者または子」限定”

遺族基礎年金は、次のいずれかの者が死亡した場合に支給されます。

  • 国民年金の被保険者
  • 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満で日本国内に住所がある者
  • 老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済等期間25年以上)または受給資格を満たす者

受給対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた、

  • 子のある配偶者、または

に限定されています。「子」とは、18歳到達年度末まで(障害等級1・2級なら20歳未満)の未婚の子を指します。

ここが試験で最重要のポイントです。「子のない配偶者」(独身夫婦の片方が死亡した場合など)は遺族基礎年金を受給できません。また、子のある配偶者が再婚した場合や、子が18歳到達年度末を迎えた場合などは受給権が消滅します。

2025年度の遺族基礎年金額は831,700円/年(老齢基礎年金の満額と同額)に子の加算を加えた額です。

試験で出るポイント

「子のない妻も遺族基礎年金を受給できる」は典型的な誤答です。遺族基礎年金は「子のある配偶者または子」のみが対象で、子のない配偶者には支給されません(その代わり、第1号被保険者の妻には寡婦年金、第2号被保険者の妻には遺族厚生年金中高齢寡婦加算といった別の保障があります)。

遺族厚生年金 ── 受給範囲が広く順位がある

Section titled “遺族厚生年金 ── 受給範囲が広く順位がある”

遺族厚生年金は、次のいずれかの者が死亡した場合に支給されます。

  • 厚生年金保険の被保険者
  • 被保険者であった者で、被保険者期間中の傷病で初診日から5年以内に死亡
  • 障害等級1・2級の障害厚生年金の受給権者
  • 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済等期間25年以上)等

受給対象者には優先順位があり、上位の者がいる場合は下位の者には支給されません。

順位対象者備考
1配偶者・子配偶者と子が同時にいる場合は、原則として配偶者に支給(子の遺族基礎年金は別途)
2父母55歳以上(支給開始は60歳から)
318歳到達年度末まで(障害なら20歳未満)
4祖父母55歳以上(支給開始は60歳から)

兄弟姉妹は対象外である点に注意しましょう。また、夫・父母・祖父母は55歳以上でなければ受給権が発生せず、支給開始は60歳からです。

遺族厚生年金の年金額は、死亡した者の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。

30歳未満の子のない妻 ── 5年間の有期給付

Section titled “30歳未満の子のない妻 ── 5年間の有期給付”

遺族厚生年金には例外があります。夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は、遺族厚生年金の受給権が発生してから5年で失権(5年間の有期給付)します。これは、若く子もいない妻には再就職等による自立が期待できるためです。

中高齢寡婦加算 ── 妻のための上乗せ

Section titled “中高齢寡婦加算 ── 妻のための上乗せ”

中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金の受給権を持つ妻のうち、次のいずれかに該当する場合に、40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に加算されます(2025年度:年額623,800円)。

  • 夫が死亡したときに40歳以上65歳未満で、かつ生計を同じくする子がいない妻
  • 遺族基礎年金の受給権を持っていた妻が、子の年齢到達等で遺族基礎年金が支給されなくなった時点で40歳以上であった場合

「中高齢の専業主婦は、夫の死亡で遺族基礎年金(子のある間)が打ち切られたあと収入源を失いやすい」という事情に配慮した加算です。妻が65歳に達して自分の老齢基礎年金を受給開始すると、中高齢寡婦加算は終了します。

第1号被保険者の遺族向け給付 ── 寡婦年金・死亡一時金

Section titled “第1号被保険者の遺族向け給付 ── 寡婦年金・死亡一時金”

第1号被保険者は厚生年金に加入していないため、子のない配偶者などには遺族基礎年金も遺族厚生年金も支給されません。そのギャップを補うのが、国民年金独自の寡婦年金死亡一時金です。

給付受給対象支給期間・金額
寡婦年金第1号被保険者として保険料納付済等期間が10年以上ある夫が死亡し、婚姻期間10年以上の妻妻が60歳〜65歳に達するまでの期間、夫の老齢基礎年金額の3/4
死亡一時金第1号被保険者として保険料を3年以上納付した者が、年金を受けずに死亡した場合の遺族一時金(納付月数に応じて12〜32万円)

寡婦年金と死亡一時金は両方の要件を満たす場合、選択受給となります(両方は受給できない)。また、遺族基礎年金が受給できる場合には寡婦年金・死亡一時金は支給されません(遺族基礎年金が優先)。

併給調整 ── 同一支給事由はセット、別事由は選択

Section titled “併給調整 ── 同一支給事由はセット、別事由は選択”

公的年金には「1人1年金の原則」があり、複数の年金の受給権が生じたときは原則としてどちらか一つを選びます。ただし、同一の支給事由であれば基礎年金と厚生年金は併給されます。

組み合わせ取扱い
障害基礎年金+障害厚生年金(同一の障害)併給可(セットで支給)
遺族基礎年金+遺族厚生年金(同一の死亡)併給可(セットで支給)
老齢基礎年金+老齢厚生年金併給可(セットで支給)
老齢厚生年金+遺族厚生年金(65歳以降)一定のルールで併給可(差額調整あり)
老齢年金と障害年金(別事由)原則として選択

試験で出るポイント

「同じ事由(老齢どうし/障害どうし/遺族どうし)の基礎と厚生はセットで併給」、「事由が違うものは原則選択」が併給調整の基本ルールです。

障害年金と遺族年金の構造 — 1階・2階の年金構造と関連加算

項目障害基礎年金障害厚生年金遺族基礎年金遺族厚生年金
等級1級・2級1級・2級・3級+障害手当金
1級と2級の関係1級=2級×1.25倍同左(報酬比例×1.25)
加算子の加算のみ配偶者加給年金(1・2級)子の加算中高齢寡婦加算(妻40〜65歳)
受給対象本人本人子のある配偶者または子配偶者・子・父母・孫・祖父母(兄弟姉妹除外
給付額の特徴2025年度 2級=831,700円報酬比例老齢基礎年金満額+子加算報酬比例の3/4

実際の試験で繰り返し問われるひっかけパターンは次の3つです。

  1. 「子のない妻も遺族基礎年金を受給できる」── 誤り。受給対象は「子のある配偶者または子」に限定されています。
  2. 「障害厚生年金3級は障害基礎年金もセットで支給される」── 誤り3級は障害厚生年金のみで、障害基礎年金は支給されません。
  3. 「遺族厚生年金の対象に兄弟姉妹も含まれる」── 誤り。配偶者・子・父母・孫・祖父母までで、兄弟姉妹は対象外です。

試験で出るポイント(総まとめ)

Section titled “試験で出るポイント(総まとめ)”

試験で出るポイント

  • 障害基礎年金は1級=2級の1.25倍、加算は子のみ(配偶者加算は障害厚生年金)。
  • 障害厚生年金の3級は基礎なし(厚生のみ)、3級未満には障害手当金(一時金)。
  • 遺族基礎年金の対象は**「子のある配偶者または子」**。子のない配偶者は対象外。
  • 遺族厚生年金は配偶者→父母→孫→祖父母の優先順位で兄弟姉妹は除外。給付は報酬比例の3/4
  • 中高齢寡婦加算は妻40〜65歳の間に上乗せ。
  • 寡婦年金・死亡一時金は第1号被保険者の遺族のための独自給付で、両方の要件を満たすと選択

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が死亡した場合に、その者によって生計を維持されていた配偶者に対し、子の有無を問わず支給される。次の記述の正誤を判定せよ。

子のない配偶者にも遺族基礎年金が支給される。

解答

正解:×

遺族基礎年金の受給対象は、死亡した者によって生計を維持されていた**「子のある配偶者」または「子」**に限定される。「子」とは18歳到達年度末まで(障害等級1・2級なら20歳未満)の未婚の子を指す。子のない配偶者は遺族基礎年金を受給できない。なお、子のない妻には遺族厚生年金や中高齢寡婦加算等の別の給付が用意されている。

障害基礎年金の年金額は、障害等級1級に該当する者の場合、障害等級2級に該当する者の年金額の1.5倍である。次の記述の正誤を判定せよ。

障害基礎年金1級は2級の1.5倍である。

解答

正解:×

障害基礎年金は1級・2級の2段階で、1級は2級の1.25倍である(2級が老齢基礎年金満額と同額、1級はその1.25倍)。「1.5倍」「2倍」などの誤った倍率を用いた選択肢が頻出するため、1.25倍を正確に押さえておく必要がある。

障害厚生年金は1級から3級まで支給され、3級に該当する場合は障害厚生年金とともに障害基礎年金も支給される。次の記述の正誤を判定せよ。

障害厚生年金3級には障害基礎年金もセットで支給される。

解答

正解:×

障害厚生年金の1級・2級については障害基礎年金(1級・2級)が併給されるが、3級は障害厚生年金のみ障害基礎年金は支給されない。3級には最低保障額が設定されており、3級に至らない程度の障害には障害手当金(一時金)が支給される。

遺族厚生年金の受給対象者として、最も適切なものはどれか。

① 死亡した被保険者の兄弟姉妹 ② 死亡した被保険者によって生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母 ③ 死亡した被保険者によって生計を維持されていた配偶者および同居していたすべての親族

解答

正解:②

遺族厚生年金の受給対象者は、死亡した被保険者によって生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母であり、兄弟姉妹は含まれない。受給には優先順位があり、上位の者が受給する場合、下位の者には支給されない。なお、夫・父母・祖父母は55歳以上であることが要件で、支給開始は原則60歳からとなる。

夫の死亡時に40歳の妻(子なし)が遺族厚生年金の受給権を取得した場合、この妻の遺族厚生年金には、原則として65歳に達するまでの間、中高齢寡婦加算が加算される。次の記述の正誤を判定せよ。

40歳・子のない妻には中高齢寡婦加算が加算される。

解答

正解:○

中高齢寡婦加算は、夫の死亡当時に40歳以上65歳未満で生計を同じくする子がいない妻、または遺族基礎年金を受給していた妻が子の年齢到達等で遺族基礎年金を受給できなくなった時点で40歳以上であった場合に、65歳になるまで遺族厚生年金に加算される。妻が65歳に達して自分の老齢基礎年金を受給するようになると終了する。

第1号被保険者として国民年金保険料を15年間納付してきた夫(一度も年金を受給せず)が死亡した。婚姻期間20年の妻(55歳・子なし)が受給できる給付として、最も適切なものはどれか。

① 遺族基礎年金 ② 寡婦年金(妻が60歳から65歳になるまでの間支給) ③ 遺族厚生年金(妻が60歳から終身支給)

解答

正解:②

夫は第1号被保険者で厚生年金に加入していないため遺族厚生年金は支給されない。また、妻に子がいないため遺族基礎年金も支給されない。第1号被保険者の遺族向け独自給付として、保険料納付済等期間10年以上・婚姻期間10年以上の要件を満たす妻には、60歳から65歳に達するまで寡婦年金(夫の老齢基礎年金額の3/4)が支給される。なお、寡婦年金と死亡一時金の両方の要件を満たす場合は選択受給となる。

公的年金には「1人1年金の原則」があり、同一の支給事由による基礎年金と厚生年金は併給されるが、支給事由が異なる年金(例:老齢厚生年金と障害基礎年金)は原則として一方を選択して受給する。次の記述の正誤を判定せよ。

同一事由の基礎と厚生は併給、別事由は原則選択である。

解答

正解:○

老齢基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と障害厚生年金、遺族基礎年金と遺族厚生年金など、同一の支給事由による1階・2階はセットで併給される。一方、老齢年金と障害年金のように支給事由が異なるものは原則として選択受給となる。例外として、65歳以降の老齢厚生年金と遺族厚生年金については一定のルールで併給される(差額調整あり)。

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