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雇用保険

会社員が失業したとき、育児や介護で休業するとき、あるいは60歳以後も働き続けるとき。働く人の暮らしを「途切れさせない」ように設計されているのが雇用保険です。FP3級では、求職者給付(基本手当)の数値要件を中心に、教育訓練・育児・介護・高年齢の各給付がまんべんなく出題されます。

雇用保険を扱う雇用保険法は、保険者を政府とし、原則としてすべての適用事業所で働く労働者を被保険者とします。保険料は労使双方が負担しますが、その内訳や負担割合は労災保険(事業主全額負担)とは異なるため、よく対比して整理しましょう。

雇用保険のしくみ ── 保険者・被保険者・保険料

Section titled “雇用保険のしくみ ── 保険者・被保険者・保険料”

雇用保険の保険者は政府(厚生労働大臣が管掌、実務は公共職業安定所=ハローワークが担う)です。労働者を1人でも雇用する事業は原則として強制適用事業所となり、適用事業所に雇用される労働者は、次の要件をいずれも満たすと被保険者になります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある

パート・アルバイトでもこの要件を満たせば被保険者になります(ただし4人以下の農林水産業の一部などには例外あり)。なお、後述する労災保険は労働時間の長短にかかわらず全労働者に適用される点で大きく異なります。

試験で出るポイント

雇用保険と労災保険の適用範囲を取り違えさせる出題が頻出です。「雇用保険=週20時間以上などの要件あり」「労災保険=労働時間に関係なく全労働者に適用」と方向で覚えましょう。

保険料は労使双方で負担しますが、事業主のほうが多く負担する仕組み(折半ではない)です。FP3級では負担割合の細部までは問われませんが、「労災は事業主全額/雇用保険は労使双方(事業主多め)」という大枠を押さえれば十分です。

基本手当(求職者給付の中心)

Section titled “基本手当(求職者給付の中心)”

基本手当は、被保険者が離職して働く意思と能力があるにもかかわらず職に就けない場合に支給される、雇用保険の中心的な給付です。「失業手当」「失業保険」と通称されますが、正式名称は基本手当です。

受給要件 ── 「2年12か月」「1年6か月」

Section titled “受給要件 ── 「2年12か月」「1年6か月」”

基本手当の受給資格は、離職理由によって2系統に分かれます。

区分対象被保険者期間の要件
一般の離職者自己都合退職、定年退職など離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上
特定受給資格者特定理由離職者倒産・解雇による離職、有期雇用の雇止めなど離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上

「2年12か月/1年6か月」という対の数字は、FP3級の基本手当論点で最頻出です。倒産・解雇のような本人に責任のない離職には、要件を緩和して受給しやすくする趣旨です。

基本手当は、離職後ハローワークで求職の申込みをした日から、まず待機期間として7日間は支給されません。これはすべての離職者に共通です。

待機期間が明けた後、自己都合退職の場合はさらに**給付制限期間(原則2か月)**が設けられ、その間も支給されません。倒産・解雇等による離職(特定受給資格者)には給付制限がなく、待機7日終了後すぐに支給が始まります。

離職理由待機期間給付制限期間
自己都合退職7日原則2か月
定年退職7日なし(一定要件で延長)
倒産・解雇等(特定受給資格者)7日なし

試験で出るポイント

「自己都合離職でも待機7日のみで支給開始」は誤りです。自己都合退職には原則2か月の給付制限があります。また「給付制限は4か月」も誤りで、2か月が正解です。

所定給付日数 ── 年齢・被保険者期間・離職理由で決まる

Section titled “所定給付日数 ── 年齢・被保険者期間・離職理由で決まる”

基本手当が何日分支給されるか(所定給付日数)は、①離職理由、②年齢、③被保険者であった期間の3つで決まります。FP3級では細かい日数表の暗記までは問われませんが、おおよその範囲と方向感は押さえましょう。

区分被保険者期間の長さ所定給付日数の範囲
一般の離職者(自己都合・定年など)10年未満〜20年以上90日〜150日
特定受給資格者(倒産・解雇等)1年未満〜20年以上、かつ年齢区分90日〜330日
就職困難者(障害者等)区分により150日〜360日

ポイントは、会社都合(特定受給資格者)のほうが自己都合より給付日数が長く設定されていることです。年齢が高く被保険者期間が長いほど日数も増えていきます。

1日あたりの支給額(基本手当日額)は、離職前6か月の賃金から計算した賃金日額に、年齢区分ごとの**給付率(45〜80%)**を乗じて求めます。賃金が低い人ほど給付率が高く設定されており、低所得者を厚く保護する仕組みです(上限額・下限額あり)。

教育訓練給付 ── スキルアップを後押しする給付

Section titled “教育訓練給付 ── スキルアップを後押しする給付”

教育訓練給付は、被保険者(または離職して一定期間内の人)が厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受講・修了した場合、受講料の一部が支給される給付です。3種類があります。

種類対象講座のイメージ給付率(受講料に対する割合)上限額
一般教育訓練給付金簿記・TOEIC・宅建など幅広い講座20%10万円
特定一般教育訓練給付金介護職員初任者研修・税理士など実務直結資格40%20万円
専門実践教育訓練給付金看護師・社会福祉士・MBAなど中長期キャリア形成受講中50%+資格取得・就職で追加20%(最大70%年間上限あり

受給には被保険者期間の要件があります。一般教育訓練給付では、原則として被保険者期間が通算3年以上(初回受給者は1年以上)必要です。離職後でも離職日の翌日から1年以内に受講開始すれば対象となります。

試験で出るポイント

「教育訓練給付は誰でも受けられる」は誤りです。被保険者期間の要件があり、受講前に支給要件照会が必要です。一般教育訓練給付の数字「20%・上限10万円」は丸暗記対象です。

仕事を続けながら子育てや家族介護をするための給付も、雇用保険から支給されます。健康保険の出産育児一時金や傷病手当金とは別の制度なので、混同しないよう注意しましょう。

満1歳(一定要件で最長2歳)未満の子を養育するために育児休業を取得した被保険者に支給されます。支給額は次のとおりです。

期間支給額(休業開始時賃金日額×支給日数に対する割合)
育児休業開始から180日(6か月)まで67%
181日目以降〜原則1歳まで50%

育児休業期間中は健康保険・厚生年金保険の保険料が事業主・被保険者ともに免除されるため、手取りベースでは賃金の8割程度をカバーする設計です。

家族(配偶者・父母・子・配偶者の父母など)を介護するために介護休業を取得した被保険者に支給されます。

  • 支給額:休業開始時賃金日額×支給日数の67%
  • 支給対象期間:通算93日を限度に3回まで分割可能(最長3か月)

「育休67%(最初の半年)/介護67%(最長3か月)」と数字をそろえて覚えるのが効率的です。

高年齢雇用継続給付 ── 60歳以後の賃金低下を補う

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60歳到達後も働き続ける高齢者の賃金低下を補う給付が高年齢雇用継続給付です。60歳到達時点の賃金と比べて、60歳以後の賃金が75%未満に低下した場合に支給されます。

  • 対象:被保険者期間5年以上、60歳以上65歳未満で在職中の被保険者
  • 支給額:60歳以後の各月の賃金の最大15%(賃金低下率に応じて変動)
  • 2025年度から段階的縮小:上限15%→10%へ縮小される(経過措置あり)

試験で出るポイント

「賃金低下率85%未満で支給」は誤り。正しくは75%未満です。「2025年度から最大10%に縮小」という制度改正も今後問われる可能性があります。

定年延長や継続雇用が当たり前になり、賃金が下がっても働き続ける人が増えるなかで、現役時代との段差をやわらげる役割を担っています。

雇用保険の給付一覧 — 基本手当・育児休業・介護休業・教育訓練・高年齢雇用継続給付

  1. 「自己都合離職でも待機7日のみで支給開始」── 誤り。自己都合退職には原則2か月の給付制限があります。
  2. 「自己都合離職の給付制限は4か月」── 誤り。原則2か月です。
  3. 「教育訓練給付は誰でも受けられる」── 誤り。被保険者期間の要件(一般教育訓練給付は通算3年以上、初回は1年以上)があります。
  4. 「高年齢雇用継続給付は賃金低下率85%未満で支給」── 誤り75%未満が要件です。
  5. 「労災保険料は労使折半」── 誤り。労災保険は事業主全額負担で、雇用保険のように労使双方で負担するわけではありません。

試験で出るポイント(総まとめ)

Section titled “試験で出るポイント(総まとめ)”

試験で出るポイント

  • 基本手当の受給要件は「離職前2年間に12か月」(特定受給資格者は「1年間に6か月」)
  • 自己都合退職の給付制限は原則2か月、待機7日は全員に共通
  • 所定給付日数は自己都合90〜150日、会社都合90〜330日
  • 一般教育訓練給付金は受講料の20%・上限10万円
  • 育児休業給付金は67%(180日)→50%、介護休業給付金は67%・最長3か月
  • 高年齢雇用継続給付は60歳時点比75%未満で賃金の最大15%(2025年度から縮小)

会社員のAさん(35歳)は、自己都合により勤務先を退職し、ハローワークで求職の申込みを行った。Aさんは離職日以前2年間に通算18か月間、雇用保険の被保険者であった。次の記述の正誤を判定せよ。

Aさんは受給資格を満たすが、自己都合退職であるため、待機期間7日間が経過した後さらに原則2か月の給付制限期間があり、その間は基本手当を受給できない。

解答

正解:○

一般の離職者は、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上で受給資格を満たす。さらに自己都合退職には待機7日間+給付制限原則2か月が課されるため、その間は基本手当が支給されない。なお倒産・解雇等の特定受給資格者には給付制限はない。

会社員のBさん(45歳)は、勤務先の倒産により離職した。Bさんは離職日以前1年間に通算8か月間、雇用保険の被保険者であった。次の記述の正誤を判定せよ。

Bさんは特定受給資格者に該当するが、被保険者期間が「離職日以前2年間に通算12か月以上」を満たしていないため、基本手当を受給できない。

解答

正解:×

倒産・解雇等による離職者(特定受給資格者)は要件が緩和されており、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば受給資格を満たす。Bさんは1年間に8か月の被保険者期間があるため要件を満たし、待機7日間経過後に給付制限なしで基本手当を受給できる。

雇用保険の教育訓練給付に関する次の記述の正誤を判定せよ。

一般教育訓練給付金の支給額は、受講者本人が支払った教育訓練経費の50%相当額(上限20万円)である。

解答

正解:×

一般教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の20%相当額(上限10万円)である。50%・上限20万円は他制度の数値(特定一般や専門実践の一部要素)と取り違えやすい典型的なひっかけ。なお特定一般教育訓練給付金は40%、専門実践教育訓練給付金は最大70%である。

会社員のCさん(30歳)は、第1子の誕生に伴い、子が1歳になるまで育児休業を取得することにした。次の記述の正誤を判定せよ。

Cさんが受給する育児休業給付金は、育児休業開始から180日までは休業開始時賃金日額×支給日数の67%、181日目以降は50%である。

解答

正解:○

育児休業給付金は、育児休業開始から180日(6か月)まで67%、**181日目以降は50%**で支給される。育児休業期間中は社会保険料も労使ともに免除されるため、手取りベースでは休業前賃金の約8割をカバーする設計である。

雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金に関する次の記述の正誤を判定せよ。

高年齢雇用継続基本給付金は、被保険者期間が通算5年以上で、60歳以後の賃金が60歳到達時点の賃金月額と比較して85%未満に低下した場合に支給される。

解答

正解:×

高年齢雇用継続基本給付金の支給要件は、60歳以後の賃金が60歳到達時点の賃金月額と比較して75%未満に低下した場合である。「85%未満」は典型的なひっかけ選択肢。なお給付率は最大15%(2025年度以降は段階的に最大10%へ縮小)である。

雇用保険の基本手当に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 基本手当の所定給付日数は、自己都合退職者と倒産・解雇等による離職者で同じである。 ② 基本手当の受給資格を得るためには、いずれの離職理由でも、離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要である。 ③ 基本手当は、ハローワークで求職の申込みをした日から起算して7日間の待機期間が経過するまでは、いかなる離職理由でも支給されない。

解答

正解:③

①は誤り。倒産・解雇等の特定受給資格者は、自己都合退職者より所定給付日数が長く設定されている(最大330日)。②も誤り。特定受給資格者・特定理由離職者は「1年間に6か月」と要件が緩和されている。③が正しい。待機期間7日間は離職理由を問わずすべての受給者に共通する。

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